2019年3月3日日曜日

39 スローモードへ

定期的な通院が始まった。病院の会計待合ベンチに座っていると、病院が外の世界とは違う優しい波動で包まれていることに気づく。それは患者からのものなのか、私からのものなのか。 

様々な疾患、状態の人がいる。健常者と比べると全員が何らかのハンディキャップを負っている。しかし、こうして今呼吸をして生きているという事実は誰もが同じ。そう思うと、静かな感動が訪れる。 
 

片足が大きく曲がっている女性が向こうから歩いてくる。綺麗にお化粧をしていて、服装のセンスも良く素敵だ。一歩一歩に大変な努力がいるが、その女性はバランスをとりながら前後に体をくねらせて踊るような格好で歩いている。
 

その人を見たときに、何かが違い、何か光っているように感じたが、私の前を通り過ぎた時、その人の体の中で精一杯活動しているエネルギーが飛び出してきて、私はハッとした。それは強力な生命エネルギーだった。 

私は優しく謙虚な気持ちになった。右目は視力は改善されても歪みは残っているので完全ではないし、左目の白濁は進行しているが、私の体の中を覗いてみたら、きっと与えられている状況の中で全部が精一杯活動しているのだろう。そう思うと、私は今の自分の状態に対して十分感謝できた。 

猛スピードで突き進む時代が終わり、社会のクレイジーな車輪から抜け出て、ゆったりとした自分自身の時空へ。何かをしていないと落ち着かないため動き続け、それで充実した人生を送っている錯覚に陥っていることほど、虚しいことはない。 

貪欲に何かをつかもうという気持ちはないし、追い求めるものはない。一番乗り、先頭にいる必要もない。自分の中にスペースがあると余裕が出てくる。それは豊かなこと。余裕があると快く人に譲れる。今の私はそんな自分が好き。 

そういえば、私はこれまで出会ったシャーマンやメディスンマン、メディスンウーマンたちが持つ特有なエネルギーに憧れていた時期があった。彼らはゆっくりと動き、ゆっくりと話す。言葉数は少ないが、無駄な言葉がないだけに一語一語がパワフルで、強烈なほど自分軸を持っており、周りがどうであろうと影響されない。違った時空を見ているような雰囲気があるが、呼吸と共に誰よりも今ここにいると感じさせるほど接地している。 

それに近づけたかどうかはわからないが、全体にスローモードへと移行し、以前よりも自分と共にいる感覚が強いことは確かである。それは心地よい状態である。