2019年3月3日日曜日

41 魂のエッセンス

弾いている様子を録画してあったので後で聴いてみると、全く頭は使っていなかったのにまるで作曲してあったかのように構成があったり、目を閉じていても正確に同じ場所へ指が置かれて同じメロディーが繰り返されていたり、要所要所で心地よい間が置かれていたりと、弾き方もよく知らないのによくあんなことができたものだと自分でも驚いた。本当に、自分の頭で考えると不可能だと思えることばかりだった。 

その後、私はこの演奏の録画を何度聴いても飽きなかった。なぜ飽きないのかというと、そこに私の深い部分が反応する音やメロディーが織り込まれていたからである。特定のメロディーや和音にゾクッとしてスイッチがオンになる感覚があったり、聴いていると体が熱くなってきたりする。 

岩手の友人が弾くピアノから伝わってくる彼女の奥に秘められた姿に「心打たれて感動した」、「何かとてつもなく大切なものに触れさせてもらっていると感じた」、「これはただの演奏ではない、魂のこえだ」と前に書いたが、自分の演奏を聴いていて、これは私の魂のこえであり、エッセンスだと思ったのである。 

それを聴くことは、エネルギーを水に転写して作るフラワーエッセンスや環境エッセンスを体内に取り入れるようなもので、聴くことで内側からの変化が加速していくのではないかと思う。 

耳を澄ませて、もう一度丁寧に聴いてみる。内側から溢れ出る即興演奏は、唯一無二で二度と同じものを作ることはできない魂のこえを表現したもの。今を生きる私という存在のこえが、指という肉体を通して発せられる色とりどりで豊かな世界。 

その豊かな世界を心の目で観ると、そこには宇宙が横たわっているように感じられる。ひとつひとつの音の組み合わせで構成される演奏の中に、普遍と可変がそれぞれ縦糸と横糸になって紡がれている。音と音の間の静寂には漆黒の宇宙の広がりがあり、音の波紋がその空間に広がっていく。そして、それらすべての背後には、大いなる神秘が横たわっているように感じられる。