2019年3月3日日曜日

22 クモの目

翌日友人宅を出て駅に到着すると、壁側のテーブルにチラシが置いてあり、何かの生き物のとても愛らしい丸く黒い目の写真に目が留まった。

まんまるでキラキラ光っている目は、なんてかわいいのだろう、何の目だろうと思ったら、それは博物館のチラシで、「魅力的な八本足の生きもの クモ」というテーマの展示を告知するものだった。 

その目の写真の下に、クモの全体像の写真が小さく載せてあり、それはとても可愛いとは言い難い姿だった。 

目だけを見たら可愛いと思うのに、全体の姿を見ると怖い、不気味だと自動的に反応しているのは、脳の仕業だった。 

そして思った。きっと私の頭の中は、こんな風に先入観だらけなんだろうなあ。先入観がなかったら、つまり頭の中に出来上がってしまっているプログラムが外れたら、世界はどんな風に違って見えてくるだろう? 

北海道でのハチとの出会いから、私は不可能を可能にするということへ、その流れの方向へと意識を向けるようになった。

より新しく、高く広い意識の状態へと移行する流れの中で、これからは今までにない発想や視点が速いスピードで次々と生まれ、その勢いに押し出されるように、これまで不可能だと考えられていたことが、これまた速いスピードでごく自然に可能になっていくのかもしれない。 

余談になるが、他の昆虫の足は6本であるのに対し、クモの場合8本あり、体は頭胸部と腹部の2つで8の形をなしているため、クモは無限の創造とバランスの象徴とされている。また、友人宅は「八」という字が付く町にあり、そこで私はインスピレーションに任せて弾くという創造体験をした。こじつけになるかもしれないが、「はち」との関係はここでも続いていた。 

さらに、この時のこのチラシとの出会いで感じたことは、その後の入院中の体験とも繋がっていくことになる。