2019年3月3日日曜日

34 ポジティブな体験・記憶への書き換え

夜空に向かって昇り始める列車のように、入院中に私は心がさらに軽やかになっていくプロセスを通っていた。それは、子供時代の否定的な記憶が、ポジティブな体験へと集中的に組み変わるというものだった。 

私は幼少期は病弱で扁桃腺肥大症だったため、頻繁に扁桃腺が腫れて高熱を出し、小学生の頃は学校を休みがちだった。今では禁止されている薬の副作用で顎が塞がらず目が上に上がってしまい、救急車で搬送されるということもあった。10歳で麻疹を患うまで、痛い注射、苦い薬、辛い体、苦しい思いというネガティブな体験が続いた。 

その後、中学生の時に受けた盲腸手術でミスがあり他の臓器に傷がついて、それが原因で長い入院を強いられた。体の力が抜け、呼吸するだけでも苦しいため、人が立っていたり座っていたりする姿を見ると、それが当たり前にできて、できることを全く意識さえしていないことに対し、とても羨ましく思った強烈な記憶がある。 

油や肉を避けた病院食は味がなくてまずく、食べても力が出なかった。抜糸したら傷口がくっついていなかったため再度縫い直しというハプニングまであり、さらに入院が長引くという肉体的にも精神的にも辛く苦しい体験だった。

大人になっても病院や医師に対して体は緊張状態になり、これ以上体に傷を付けたくないという思いやネガティブな考えしかなかった。 

しかし、今回の目の手術では、手術室でバックにかかるロックミュージックのアップビートの波動に私はワクワクし、手術チームの手際よさに感動して、至福状態にまでなった。さらに、何もかも新しい体験が詰まった手術全体を、細部にわたって終始静観できるほどリラックスして落ち着くことができた。医師のハートから温かいエネルギーが流れているのを感じられた。

病院食は普通食だったためもあり美味しくいただけ、今度このレシピで自分で作ってみようと思ったものさえあった。 

以前は、病院は病気の人で溢れかえり、人が死んだりする恐ろしい場所と思っていたが、今私は、勤勉な医療スタッフの優しい応対に感謝できる癒される場所にいた。家事から解放されてゆっくりでき、たっぷり眠り、1週間の入院は安全で心地よく感じられた。 

静かな一人の時間は、内側の変化を感じる特別な時間だった。そのタイミングで、まるでその変化をさらに意識化させるような面白いことが起こった。 

メールをチェックすると、何年かぶりで、アメリカの知人からのお知らせメールが届いていた。最近のブログ「アセンショングランドフェーズと覚醒」をアップしたというメールであったが、私はそのタイトルを見た瞬間に惹きつけられた。 

それは意識の覚醒段階について触れたもので、大脳生理学に基づいた説明も含まれており、面白くて私は夢中になって読んだ。特に、意識の覚醒のための脳プログラムの書き換え、つまりポジティブな体験・記憶へと書き換えていくことの重要性について書かれており、それはまさに今、自分に起こっていることだと思った。私は入院中にポジティブな体験をすることで、脳内の記憶・記録が新しいものへと書き換えられている最中だったのだ。 

まるで「今あなたに起こっていることは、こういうことだよ」と宇宙が解説を入れたようなものだった。知人からのメールは完璧なタイミングで来たな、と思った。 

さらにもうひとつ、脳プログラムを取り巻く感情のドラマのようなものを聞くことになった。 

私の部屋のすぐ近くに小さな休憩室があり、面会の家族や通話をする患者が利用している。ある日、そこを通りがかった看護師が「ここでの飲食は禁止です!」と誰かに注意する大きな声が聞こえてきた。すると、そこにいた女性が「食べてません!持っているだけです!」と答え、そこから激しいやりとりが始まった。 

「私は食べていないですよ!持っているだけなのに、その言い方は失礼です!」 

「この場所は飲食禁止なので、そのことを確認したかったのです!」
看護師もムッとしているのが伝わってくる。 

「だから、私は食べてないって言ってるんですよ。あなた、まるで私が食べているかのような口調で注意して、それも大きな声を出して、失礼ではないですか!私は持っているだけなのに、持っていてもダメなのですか?!」

 女性はほとんどヒステリックになって、大きな声を出している。 

「ここで食べている人がいるので・・・飲食禁止のルールがあるんです」 

「だ〜か〜ら〜、私は食べてないでしょ?食べてないのに、まるで犯人扱いして、気分悪いです。謝ってください!」   

と、こんな風に双方全く平行線のままの言い合いが続き、最後に看護師はそのままバタバタと大きな足音を立てて去っていった。 

これを聞いていて、どちらが悪いのか?と思うかもしれないが、これは両方が互いに脳プログラムに影響されて反応しているだけだと私は感じた。それがなかったら、看護師はいきなり大きな声で注意するようなことはしないだろうし、女性は不当に叱られたことに対する異常なほどしつこい反応もしなかっただろう。 

この出来事は、私自身の脳プログラムの書き換えだけでなく、この古いプログラムのトリックをしっかり覚えておくんだよと、宇宙が「今だけお得なセット」にして見せてくれたように思えて仕方ない(苦笑)。 

知人からのメールは、今これだよ、これっ!という風に、本当に完璧なタイミングで来たのだった。眼科で入院なのに脳神経外科病棟の部屋を割り当てられたのはなぜ?と思っていたが、脳のことへとこんな形で繋がるなんて!おもしろ過ぎる!  

心が軽やかで、どこかワクワクしている自分がいる。夢で見た夜空に向かって昇り始める列車は、新しい脳内プログラムで起動する軽やかさも象徴していたのかもしれない。